— 株式会社ノウデルのAI活用への取り組み —
近年、ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)の活用が広がる一方で、コールセンターの通話や商談録音といった音声・会話データをどう活用するかも、企業にとって重要なテーマになりつつあります。文字起こしや感情分析、要約・レポート生成までを社内で一気通貫で扱いたいというニーズは、とくに機密性の高い業種で強く聞かれます。
しかし実際には、音声データの活用にあたって次のような課題があります。
- 通話や商談音声を外部クラウドに送信できない
- 文字起こし・感情解析・要約までを社内で完結させたい
- すでに稼働している社内のAI基盤(LLM・RAG・チャット)と連携させたい
こうした背景から、株式会社ノウデルでは、クローズドネットワーク環境で利用可能なRAG型AI基盤(前回ご紹介した取り組み)に加え、音声分析システム「ボイテキ2!」の設計を進めています。今回は、既存のAI基盤と同じ環境で"同居"させる構成で、音声を社外に出さずに活用する取り組みの概要をご紹介します。
ボイテキ2! 音声分析システム「ボイテキ2!」とは
今回設計を進めているボイテキ2!は、オンプレミス環境で動作する音声分析システムです。処理の流れはおおまかに次のとおりです。
- 結果は解析一覧・詳細画面で確認でき、発話本文・感情の変化・音声再生を連動して確認できる構成を想定しています。
- 経営者・営業・品質管理・人事など役割ごとの視点(レンズ)で同じ解析結果を見られるようにし、業務に応じた活用を目指しています。
重要なのは、音声と解析結果をすべて社内に閉じたまま利用できる点です。機微な通話データをクラウドに送らず、社内のLLMやRAGと組み合わせて、要約やチャット検索までをクローズド環境で完結させることを目指しています。
連携 既存AI基盤との"同居"構成
当社では、LLM・RAG・チャットUIを備えたRAG型AI基盤(FUJI RAG)をすでにDockerで運用しています。今回のボイテキ2!は、その環境に新たに1システムとして相乗りさせる形で設計しました。
既存AI基盤から利用するもの
LLM(要約・レポート生成)とチャットUI(解析結果を自然言語で検索)は、既存のFUJI RAGをそのまま利用します。将来的には、音声解析の結果をRAGに登録し、既存のチャット画面から検索できるようにする予定です。
ボイテキ2!側で完結するもの
音声の取り込み、文字起こし・感情解析の制御、解析結果の保存、一覧・詳細のAPI、音声の再生配信などは、ボイテキ2!専用のデータベースとストレージで完結させます。既存のAI基盤のデータベースには触れません。
既存システムに影響を与えない取り決め
別のDockerプロジェクト名・別ポートで起動し、既存のAI基盤の設定は変更しない方針にしています。「既存をいじらず、必要な機能だけを追加する」ことを意識した構成です。
環境 コンテナ化とオンプレサーバー
今回の構成では、アプリケーションに加え、データベースやオブジェクトストレージ(S3互換)、文字起こし・感情解析エンジンもコンテナ化する方針としています。これにより、再現性の確保やリソースの分離、バージョン管理がしやすくなります。
本番環境では、AI推論や音声処理に適したオンプレサーバーを想定しており、クローズドネットワーク内で音声の取り込みから解析・要約・チャット連携までが完結する構成を目指しています。前回ご紹介したRAG型AI基盤と同一のネットワーク上で動作させ、社内データを外部に送信しない運用を前提としています。
セキュリティ セキュリティ・アクセス制御
企業環境で音声分析を導入する際には、どのデータを誰が参照できるかの制御が重要です。今回の設計では、次のような仕組みを取り入れています。
- ユーザーのロール(役割)に応じたアクセス制御
- 役割別レンズによる表示内容の切り替え(経営者向け・営業向け・品質管理向けなど)
- 音声の再生のみ許可し、ダウンロードは提供しない方針(情報漏洩リスクの低減)
これにより、セキュリティ要件を満たしつつ、部署や役割に応じた音声データの活用を目指しています。
実務 設計で意識していること
音声分析システムの構築では、文字起こしや感情解析の精度に加え、既存のAI基盤との連携のしやすさが実務上重要になります。今回の設計では、次の点を意識しています。
- 文字起こし(Whisper系)や感情解析エンジンは別コンテナとして用意し、必要に応じてモデルの差し替えやスケール調整がしやすい構成にする
- 解析結果の状態管理(処理中・完了・一部失敗など)を明確にし、運用時の確認や再実行がしやすいようにする
- 画面はモダンなデザインとレスポンシブ対応を必須とし、発話・感情グラフ・音声再生が連動する3ペイン構成で、効率的な確認ができるようにする
これらの方針をもとに、実務で使いやすい音声分析基盤の実装を進めていく予定です。
今後 今後の展開
株式会社ノウデルでは、今回の取り組みを通じて以下のテーマに取り組んでいきます。
- クローズド環境での音声分析とRAG型AI基盤の連携
- 役割別レンズや感情イベントを活かした業務向けレポート・ダッシュボードの拡充
- 文字起こし・感情解析のコンテナ化と運用の安定化
音声・会話データの活用は、コールセンターや営業、人事・研修など、多くの業務領域でニーズが高まっています。その中でも、社内データを外部に送信せず、既存のAI基盤と連携して活用できる環境は、企業にとって重要なテーマの一つです。株式会社ノウデルでは、引き続きクローズド環境に適したAI・音声活用の研究・開発を進め、実務で使える基盤の構築を目指していきます。